36歳の専業主婦です。5年前に3歳年上の夫と結婚し、現在は3歳の男の子と1歳女の子がいます。長男を妊娠中の誕生日に夫にもらったプレゼントは迷惑でしかありませんでした。
私の夫は園芸店に勤めています。木や花が大好きで、休日は家族で公園めぐりをするのが大好きな人です。いつかは庭のある家に住んでガーデニングをしたいという夢があるようですが現在は賃貸マンション暮らしなので難しい状態です。
同棲を始めてからパセリやバジルなどを一時的に育てることはありましたが、観葉植物を買って2人で世話するということは一度もありませんでした。
というのも、私は大の面倒くさがりやで毎日花に水をやることなんて難しいと思っていました。高校時代には育て方のコツがいらないというサボテンも枯らしてしまった私です。最初はかわいいと思うのですが、だんだん面倒になって存在を忘れてしまうのです。
サボテンにはときどき大量に水をあげて済まそうとして根が腐ってしまったこともあります。夫も私が植物を愛でる気持ちに乏しいことは知っていると思っていました。なので33歳の誕生日に夫が植木鉢を持ってきたときには嫌がらせかと思ってしまいました。
その日は夫婦2人でお祝いする最後の誕生日になるだろうと思い、私の誕生日でも夫の好物のグラタンと舌平目のムニエルを準備してお祝いしました。
結婚してからそこまで誕生日プレゼントは期待していなかったのですが、毎年ピアスやネックレスなど普通の女性が喜びそうな無難な物をくれていたので特に心配はしていませんでした。
2人で夕食を食べ終え、ケーキを食べた後に夫が自慢げな顔で「今年の誕生日プレゼントは今までと違う」と言うので何をプレゼントしてくれるのか少し期待してしまいました。
その前の週に欲しい香水があるという話をしていたので買ってきてくれたのかなと思いましたが、彼がドヤ顔でクローゼットから出してきたのは大きな植木鉢でした。冗談かと思いましたが彼は真剣に「このカランコエの花の色が珍しくてどうしても見せたかった」と解説してきました。
私はカランコエという花の名前すら知らなかったのですが、私の嫌いなタイプの中年女性が好きそうな花がチマチマと咲いていて思わず絶句してしまいました。彼には赤ともオレンジとも言えない絶妙な色合いが気に入っているので、自分の化身だと思って大切に育てて欲しいと言われてしまいました。
カランコエの鉢植えをもらってからは重い気分で毎日水をやりました。実はすごく価値のある希少な花なのかもしれないと思いネットで調べましたが、普通の花でした。
どこの花屋さんでも売っているし1鉢1000円くらいで買えるお手ごろな花だということが分りました。彼が絶賛する色も凡人の目からは赤にしか見えません。毎日早く枯れてしまえと思いながら適当に水をあげていました。
私のずさんな手入れに夫はしょっちゅう文句を言ってきました。今日は寒いから日向に置け、太陽が強すぎるから水をあげるのは早朝か夕方にしろ、など子供を育てるような姿に少し引きました。
結局息子が産まれる直前に病気にかかってしまい、真っ黒になって枯れてしまいました。枯れたカランコエを見てがっくりと肩を落とし魂が抜けてたようになっている夫を見て、庭を持ったら大変なことになりそうだと恐ろしくなりました。