キルトのポーチと初めての誕生日当日の「おめでとう」

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うれしかった誕生日プレゼント

37歳の兼業主婦です。実家はごく普通の家庭でしたが、なぜか両親は私の誕生日を覚えていませんでした。覚えていないというかうろ覚えなのです。共働きの両親が家にいる週末に、日にちを移して家族うちでパーティーをしてもらい、それはもちろん自然なことだととらえられるのですが、誕生日当日を思いっ切りハズされるのです。18日生まれなのに、15日や16日の朝に「おめでとう~!」と言われてぽかんとすることがよくありました。

私自身は、小学生の時からスケジュール帳に家族・友人の誕生日を書き留めていたくらいマメだったので、こうして実の娘の誕生日をハズしてしまう両親の感覚がよくわかりませんでした。「あんまり大事にされてないんだな…」と、悲観することもあったくらいです。

大学進学のために遠方に一人暮らしを始めてからも、両親のハズしぶりは変わりませんでした。相変わらず、数日前に『今日はお誕生日よね、おめでとう!(ビッグなハート)』などと、能天気に絵文字満載の携帯メールが届いて、毎年「今年もちゃんと確認してないし…。」とため息をついていたものです。それでもマメに『ありがとう、誕生日は18日なんですけど』と絵文字なしのメールを返信していました。

このようにして、誕生日にあまり意識を持たなくなった学生時代。学業の傍ら、小さな雑貨屋でアルバイトをしていたのですが、そこの先輩に30代半ばのお姉さんがいました。地元出身、結婚して子どもがおらず、数匹のダックスフントを飼っていました。

時々犬たちの写真を見せてくれるのですが、お散歩に使うバッグや前掛け、寒い日の防寒着など、全て手作りというから驚きです。手先がものすごく器用で、ちょっとしたあまり材料でとても可愛らしい実用品を作り出す才能のある人でした。

ある日の営業終了後、その人が「●ちゃん(私です)、誕生日おめでと!」と、小さな包みを差し出してくれたのです。ぎょっとしました、それは本当に私の21歳の誕生日当日のことでした。

いつもハズしてばかりの両親に慣れていましたから、誕生日当日に「おめでとう」と言ってもらったのは、それまで記憶している中で、もう本当にこれが初めての事だったのです。普通に、誕生日当日におめでとうと言われてきた人にはちょっと違和感があるかもしれませんが、私はあまりの衝撃と嬉しさに、涙目になってしまったくらいでした。

その人は「いやー、そんな大したもんじゃないから、感動しんといて~」と照れ笑いをして、開けるように言いました。中から出てきたのは小さなパッチワーク・キルトのポーチ。もちろん先輩のお手製ですが、私の大好きなベージュ色とカラシ色の組み合わせでした。中にはハンドクリームのチューブと、キラキラ系のシールがぎっしり。これまた、私が大好きなテントウ虫モチーフのシールでした。

「なー、ちょっとしたもんやけど。手、大事にしてな」と、彼女特有の柔らかい関西弁で言われました。私が手荒れに悩んでいる事も気づかってくれたのです。

確かに、コストだけでみたら「ちょっとした」ものなのですが、私はこの小さな誕生日プレゼントの中に、先輩の温かな人間性や、私に対する気遣い・思いやりがぎっしり詰まっているのをひしひしと感じました。たかがバイトの後輩なのに、しっかり誕生日を覚えていてくれたと言うのも、本当に嬉しかったです。その年の誕生日は、とても幸せな気分で終わりました。

そうしてほんわか気分が続いていた翌朝。「今日はお誕生日よね!(ハート連発)、お~めでと~う!!」と、またしてもハズした親からのメールが入っており、本気でガクっと来たことを覚えています。